ホンダの人気コンパクトSUV、新型ヴェゼル。スタイリッシュなデザインと優れた燃費性能で注目を集めていますが、購入を検討する上で「新型ヴェゼルはパワー不足ではないか」という点が気になる方も多いのではないでしょうか。
実際にネット上では、加速悪い、ひどいといったネガティブな評判から、馬力やシステム最高出力は十分なのか、具体的な0-100kmタイムや最高速度はどうなのか、といった疑問の声が見られます。
また、チューニングによるパワーアップの可能性や、視界悪いといった他の欠点、バッテリー上がりの原因、そしてe:HEVならではのクリープ現象とは何か、といった専門的な部分まで、知りたい情報は多岐にわたるでしょう。
この記事では、それらの疑問や不安を解消するため、新型ヴェゼルの動力性能に関する情報を多角的に分析し、詳しく解説していきます。
- 新型ヴェゼルの馬力と実際の加速性能
- 高速道路や坂道でのパワー感に関する評判
- パワー不足以外の注意すべき欠点
- 燃費と走行性能の総合的なバランス
新型ヴェゼルがパワー不足と言われる走行性能

- 新型ヴェゼルの馬力はどのくらい?
- システム最高出力は十分な数値か
- 加速が悪いという評判の真相
- 気になる0-100kmタイムを検証
- 高速道路での最高速度は?
- チューニングによるパワーアップは可能か
新型ヴェゼルの馬力はどのくらい?
新型ヴェゼルの動力性能を評価する上で、まず基本となるのがエンジン馬力です。新型ヴェゼルには、ガソリンモデルとハイブリッドモデル(e:HEV)の2種類があり、それぞれ搭載するエンジンと馬力が異なります。
結論から言うと、ガソリンモデルの馬力は118PS(87kW)、e:HEVモデルのエンジン単体の馬力は106PS(78kW)です。これだけ見ると、特にe:HEVのエンジン馬力が低く感じられ、パワー不足の懸念に繋がるかもしれません。
しかし、車の加速感は馬力だけで決まるものではなく、車両重量とのバランスを示す「パワーウェイトレシオ」という指標が重要になります。この数値が小さいほど、加速性能が高いとされています。
ここで、新型ヴェゼルと主要なライバル車のスペックを比較してみましょう。
車種名 | モデル | 最高出力 | 車両重量 | パワーウェイトレシオ |
---|---|---|---|---|
ホンダ ヴェゼル | G (ガソリン) | 118PS | 1,250kg | 10.59 kg/PS |
トヨタ ヤリスクロス | G (ガソリン) | 120PS | 1,120kg | 9.33 kg/PS |
トヨタ カローラクロス | G (ガソリン) | 140PS | 1,330kg | 9.50 kg/PS |
日産 キックス | e-POWER | 136PS (モーター) | 1,350kg | 9.92 kg/PS |
表のパワーウェイトレシオは、車両重量を馬力で割った単純計算値です。実際の加速性能は、トランスミッションの特性やトルクなど、様々な要因に影響されます。
表を見ると、ヴェゼルのガソリンモデルは、ライバル車と比較してパワーウェイトレシオがやや大きいことが分かります。これが、スペック上で「パワー不足ではないか?」と感じられる一因と言えるでしょう。
ただ、実際に運転してみると、数字以上の軽快さを感じるという声もあります。これは、ホンダ独自のCVT制御などが影響していると考えられます。
システム最高出力は十分な数値か
次に、ハイブリッドモデルであるe:HEVの動力性能について見ていきましょう。e:HEVのエンジン馬力は106PSと控えめですが、このシステムの主役はエンジンではなく、最高出力131PS(96kW)を発生させる駆動用モーターです。
ホンダのe:HEVは、発進から中速域までのほとんどの領域をモーターのみで走行します。エンジンは主に発電に徹し、バッテリーに電力を供給する役割を担います。そのため、実際の走行フィーリングは、エンジン車とは大きく異なります。
つまり、ヴェゼルe:HEVの加速感を評価する際は、エンジン馬力ではなくモーターの出力である131PSが実質的な動力性能の目安となるのです。
この131PSという数値は、1.5LクラスのコンパクトSUVとしては十分なものであり、特に信号待ちからの発進や市街地での走行においては、電気自動車のような静かでスムーズ、かつ力強い加速を体感できます。エンジンが始動する際のショックも非常に少なく、快適なドライブが可能です。
ただし、高速道路での合流や追い越しなど、より大きなパワーが必要となる場面では、発電のためにエンジンの回転数が上がり、エンジン音が気になるという意見もあります。この点が、一部でパワー不足と評される理由の一つかもしれません。
加速が悪いという評判の真相

「新型ヴェゼルは加速が悪い」という評判は、主にどのような状況で感じられるのでしょうか。これは、ガソリンモデルとe:HEVモデルで少し事情が異なります。
ガソリンモデルの場合
ガソリンモデルは、自然吸気エンジンとCVTの組み合わせです。日常的な走行では特に問題ありませんが、急な上り坂や高速道路での追い越し加速といった場面で、「もう少しパンチが欲しい」と感じる可能性があります。
エンジン回転数が先行して高まり、後から速度がついてくるような、いわゆる「ラバーバンドフィール」をCVTの特性として感じる人もいるようです。
e:HEVモデルの場合
一方、e:HEVモデルはモーターによる力強い発進加速が魅力です。街中ではキビキビと走り、多くのユーザーが満足しています。
しかし、前述の通り、高速走行時にエンジンが高回転で唸りを上げる状況を「パワーがない」「加速が鈍い」と捉えるユーザーもいます。これは絶対的なパワー不足というよりは、期待する加速フィールとのギャップからくる印象と言えるかもしれません。
結論として、新型ヴェゼルが「極端に加速が悪い」わけではありません。ただ、運転する人の期待値や、以前乗っていた車の種類によっては、特定のシーンで物足りなさを感じる場合がある、というのが実情に近いでしょう。
気になる0-100kmタイムを検証
車の加速性能を示す一つの客観的な指標として、「0-100km/h加速タイム」があります。メーカーから公式なタイムは発表されていませんが、複数の自動車メディアやユーザーによる実測データが存在します。
様々な情報を総合すると、新型ヴェゼルの0-100km/h加速タイムは、e:HEVモデルでおおよそ9秒台後半から10秒台とされています。ガソリンモデルはそれより少し遅く、11秒台になることが多いようです。
このタイムは、コンパクトSUVのカテゴリーにおいては、平均的な数値と言えます。例えば、ライバルであるトヨタ ヤリスクロスのハイブリッドモデルも同程度のタイムであり、決してヴェゼルだけが突出して遅いわけではありません。
注意点
0-100km/hタイムは、測定時の路面状況、天候、タイヤの種類などによって変動します。あくまで一つの目安として捉え、この数値だけで動力性能の全てを判断するのは避けましょう。
日常の運転でこのタイムが重要になる場面はほとんどありませんが、高速道路への合流など、スムーズな加速が求められる際の安心感の指標にはなります。10秒前後というタイムは、実用上、何ら問題のないレベルであると言えるでしょう。
高速道路での最高速度は?
日本の公道における最高速度は法定速度で定められており、新型ヴェゼルはその範囲内で走行する上で全く問題のない性能を持っています。100km/hや120km/hでの巡航も、安定してこなすことができます。
特にe:HEVモデルは、高速巡航時にエンジンと車輪が直結される「エンジン駆動モード」を備えており、モーターの助けを借りずに効率よく走行することが可能です。これにより、高速走行時の燃費性能も向上させています。
ユーザーが気にするのは、法定速度内での追い越し加速や、そこからさらに速度を伸ばしていく際の「余裕」でしょう。この点においては、120km/hあたりまではスムーズに加速しますが、それ以上の速度域になると加速の伸びは緩やかになる、という印象を持つ方が多いようです。
これは、大排気量車やターボエンジン搭載車と比較した場合の話であり、ヴェゼルの排気量や車両コンセプトを考えれば、妥当な性能と言えます。日本の交通環境で使う分には、最高速度に関する不満が出ることはまずないでしょう。
チューニングによるパワーアップは可能か
「もしパワー不足を感じたら、後からチューニングでパワーアップできないか」と考える方もいるかもしれません。しかし、結論から言うと、新型ヴェゼルで手軽かつ大幅なパワーアップを実現するのは難しいのが現状です。
特にe:HEVモデルは、エンジン、モーター、バッテリーを高度なプログラムで統合制御しています。この複雑なシステムに介入してエンジンECU(コンピュータ)を書き換えるようなチューニングは、専門ショップでも非常に困難であり、一般的ではありません。
ガソリンモデルにおいても、自然吸気エンジンのため、ターボ車のようにECUチューニングだけで劇的に馬力が向上することはありません。
では、何もできないのか?
パワーそのものを上げるのは難しいですが、「走行フィーリング」を改善するパーツは存在します。例えば、アクセルペダルの信号を調整してレスポンスを向上させる「スロットルコントローラー」の装着は、比較的ポピュラーなカスタムです。
これにより、出足のモタつきが改善され、キビキビとした走りの感覚を得られます。
根本的な解決にはなりませんが、走行フィールに不満がある場合の選択肢の一つとして覚えておくと良いでしょう。ただ、最も確実なのは、ホンダ自身が手掛けたコンプリートカー「Modulo X」のような、メーカーが走行性能を突き詰めた特別仕様車を検討することかもしれません。
新型ヴェゼル・パワー不足以外の評判と欠点

- 乗り心地がひどいという口コミ
- 視界が悪いなどの構造上の欠点
- バッテリー上がりの原因と対策
- クリープ現象とは?e:HEVの挙動
乗り心地がひどいという口コミ
パワー不足と並んで、新型ヴェゼルでよく指摘されるのが「乗り心地」に関する問題です。一部のユーザーからは、「足回りが硬い」「路面の凹凸を拾いやすく、ゴツゴツする」「乗り心地がひどい」といった厳しい意見が見られます。
これは、ヴェゼルがSUVでありながら、スポーティでしっかりとしたハンドリングを目指してセッティングされていることが一因です。
サスペンションを柔らかくすると乗り心地は良くなりますが、カーブでの車体の傾きが大きくなり、安定感が損なわれる場合があります。ヴェゼルは、乗り心地と操縦安定性のバランスを取る中で、やや安定性寄りの味付けになっていると言えるでしょう。
特に、インチアップされた大径ホイールを装着する上位グレードや、発売初期のモデルでこの傾向が強いようです。
2024年のマイナーチェンジで改善
ホンダもこの点を認識しており、2024年4月に行われたマイナーチェンジでは、サスペンションのセッティングが見直され、乗り心地の改善が図られました。特にFFモデルでは、ダンパーの減衰力が最適化され、よりしなやかな乗り味になったと評価されています。
乗り心地の感じ方には個人差が大きいため、購入を検討する際は、必ず試乗して、普段使うであろう速度域や路面状況で乗り味を確認することが非常に重要です。
視界が悪いなどの構造上の欠点
新型ヴェゼルのデザインは、流麗なクーペスタイルが特徴ですが、そのデザインが一部で「視界が悪い」という欠点に繋がっているとの指摘があります。
具体的に指摘されるのは、主に以下の2点です。
後方および斜め後方の視界
後方に向かって絞り込まれていくサイドウィンドウのデザインと、太く傾斜したCピラー(リアドアの後ろにある柱)の影響で、斜め後ろの死角が大きくなりがちです。車線変更や合流、駐車場からバックで出る際などに、注意が必要となります。
リアウィンドウの視界
クーペのようなデザインのため、リアウィンドウの上下幅が狭く、後方の視界も限定的です。ルームミラー越しに見える範囲が狭いと感じる人もいます。
もちろん、ホンダも安全対策を講じています。上位グレードには、死角の車両を検知して知らせる「ブラインドスポットインフォメーション」や、駐車を支援する「マルチビューカメラシステム」が搭載されています。これらの先進装備を活用することで、視界の悪さを補うことが可能です。
とはいえ、物理的な視界の広さは運転のしやすさに直結します。これも乗り心地と同様に、試乗の際に必ずご自身の目で確認すべき重要なポイントです。
バッテリー上がりの原因と対策

新型ヴェゼル、特にe:HEVモデルにおいて「バッテリー上がり」に関する報告がいくつか見られます。これには、いくつかの原因が考えられます。
まず、e:HEV車には、駆動用と電装品用の2種類のバッテリーが搭載されています。バッテリー上がりを起こすのは、主にオーディオやライト類に電力を供給する12Vの補機バッテリーです。
リコール情報
過去には、特定の期間に生産された車両において、パワーテールゲートを制御するプログラムの不具合が原因で、駐車中に電力を消費し続け、バッテリーが上がる可能性があるとしてリコールが届け出られました。(参照:本田技研工業株式会社 リコール情報)
対象車両は、プログラムの修正によって対応済みです。
中古車を検討する際は、リコールの対応が完了しているかを販売店に確認することをおすすめします。
一般的な原因と対策
リコール以外では、一般的な車と同様に、ライトの消し忘れや、長期間車に乗らないことによる自然放電が主な原因です。
特に最近の車は、駐車中もセキュリティシステムなどで微量の電力を消費しています。あまり車に乗る機会がない方は、定期的にエンジンをかけてバッテリーを充電するよう心がけましょう。
クリープ現象とは?e:HEVの挙動
オートマチック(AT)車に乗り慣れている方がe:HEVのヴェゼルに乗り換える際に、少し戸惑うかもしれないのが「クリープ現象」の感覚です。
そもそもクリープ現象とは?
クリープ現象とは、AT車でエンジンがアイドリング状態の時に、ブレーキペダルを離すとアクセルを踏まなくても車がゆっくりと前に進む現象のことです。これは、エンジンとタイヤの間に「トルクコンバーター」という流体を介した動力伝達装置があるために起こります。
ヴェゼルe:HEVの場合
一方、ヴェゼルのe:HEVは、発進時にモーターで駆動するため、このトルクコンバーターを持ちません。そのため、構造上はクリープ現象が発生しません。
しかし、それでは駐車場での車庫入れなどが不便なため、ヴェゼルe:HEVはモーターの力を使って、意図的にクリープ現象を再現しています。ブレーキを離すと、まるでAT車のように、じわっと滑らかに前進・後退します。
この擬似的なクリープは非常によくできていますが、一部のユーザーからは「従来のAT車とは少し感覚が違う」という声もあります。特に、ごく低速での速度調整の感覚に違いを感じるかもしれません。これもまた、試乗で確かめておきたいポイントの一つです。
まとめ:新型ヴェゼルのパワー不足の総評
最後に、この記事で解説してきた「新型ヴェゼルのパワー不足」に関する情報をまとめます。
- 新型ヴェゼルの動力性能は街乗りでは十分なレベル
- 高速道路の合流や急な坂道ではパワー不足を感じるという声もある
- ガソリンモデルの馬力は118PSで軽快な走りが特徴
- e:HEVモデルは131PSのモーター主導で静かでスムーズな加速感を持つ
- システム最高出力はスペックの数値以上に感じられる場面も多い
- 0-100km加速タイムは10秒前後とされコンパクトSUVとして平均的
- 絶対的な速さよりも日常域での扱いやすさと燃費性能のバランスを重視した設計
- 後からのチューニングで大幅な馬力を向上させるのは難しい
- パワー不足以外の評判として乗り心地の硬さが指摘されることがある
- 2024年のマイナーチェンジで乗り心地は改善傾向にある
- クーペ風デザインに起因する後方や斜め後方の視界の狭さも欠点として挙げられる
- バッテリー上がりは過去にリコールがあったが対策済み
- e:HEVのクリープ現象はモーターで自然に再現されている
- 購入を検討する際は必ず試乗して動力性能を体感することが重要
- 特に高速道路や上り坂などパワーが求められる場面での走行感をチェックすべき
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