最近、街やメディアでその名を見聞きする機会が増えた自動車メーカー「BYD」。
しかし、一体どこの国の企業で、実際のところBYD車の評判はどうなのでしょうか。
インターネット上には、「買うな」という厳しい意見から、故障や故障率に関する悪評、さらには「売れない」「いずれ日本から撤退するのでは?」といった様々な噂が飛び交っています。
一方で、その高い安全性を評価する声もあり、情報が錯綜しているのが現状です。購入を検討する方にとっては、危険性はないのか、具体的な問題点は何?、そしてそもそも何年乗れる車なのか、数々の疑問が浮かぶことでしょう。
この記事では、期待と不安が入り混じるBYD車の評判について、ユーザーレビューや客観的なデータを基に、その真相を深掘りしていきます。
- BYDに関する様々な評判の背景と真相
- 安全性や故障に関する具体的なデータとユーザーの声
- 購入前に知っておきたいメリット・デメリット
- 長期的な視点で見た耐久性や将来性
BYD車の評判|ネガティブな噂の真相

- 一体どこの国のメーカーなのか
- 買うなと言われる理由とは
- 具体的にどんな悪評があるのか
- 日本で売れないという噂は本当か
- 日本市場から撤退する可能性は?
一体どこの国のメーカーなのか
BYDは、中華人民共和国の深圳市に本社を置く、世界有数の巨大テクノロジー企業です。
日本での乗用車販売が始まったのが2023年と最近のため、新興の自動車メーカーという印象を持つ方も多いかもしれませんが、そのルーツは1995年のバッテリーメーカーとしての創業にあります。
当初、携帯電話やノートパソコン向けのリチウムイオンバッテリーで世界的なシェアを確立し、その過程で培った高度な電池技術を武器に、2003年に自動車事業へ本格参入しました。
現在では、EV(電気自動車)とPHEV(プラグインハイブリッド車)を合わせた新エネルギー車(NEV)の分野で、米テスラ社とし烈な販売台数世界一争いを繰り広げるまでに成長しています。
また、その事業領域は自動車にとどまりません。「ITエレクトロニクス」「新エネルギー」「モノレール」を4大事業として掲げ、再生可能エネルギーの発電・蓄電ソリューションから、都市交通システムまで手掛ける複合企業体であることが大きな特徴です。
豆知識:日本との関わりと社名の由来
日本においては、2015年からすでに電気バスの納入を開始しており、全国の公共交通機関で静かに実績を積み重ねてきました。
そして2022年7月に乗用車市場への参入を正式に発表し、日本法人「BYD Auto Japan株式会社」(本社:神奈川県横浜市)のもとで事業を展開しています。
ちなみに、BYDという社名は、「Build Your Dreams(あなたの夢を築く)」という英語のフレーズの頭文字から取られており、技術革新でより良い未来を築くという企業の理念が込められています。
買うなと言われる理由とは
インターネットでBYDを検索した際に目にする「買うな」という辛辣な言葉。これには、いくつかの複合的な理由が存在すると考えられます。
購入を検討する上で重要なポイントとなるため、一つひとつを詳しく見ていきましょう。
1. 品質に対する先入観と細部の仕上げ
最も根深い理由として、「中国製品」全体に対する品質への先入観が挙げられます。残念ながら、一部にはまだ「安かろう悪かろう」というイメージが残っており、数百万という高額な買い物である自動車、特に人の命を預ける製品であるからこそ、慎重になるのは当然の心理です。
実際に、初期モデルのユーザーレビューでは「内装プラスチック部品のバリ取りが甘い」「見えない部分の仕上げが雑」といった、細部の品質管理に関する指摘が散見されました。
こうした点が、品質への懸念を増幅させる一因となっています。また、スポーツジムをイメージしたATTO 3の内装など、独特なデザインがユーザーの好みを大きく分ける点も、否定的な意見につながる場合があります。
2. アフターサービス体制への現実的な不安
次に、購入後のサポート体制、つまりアフターサービスへの不安です。BYDは2025年末までに全国100店舗以上の正規ディーラー網を構築する計画を推進していますが、2025年7月時点での正規ディーラー数はまだ全国で40数店舗にとどまっています。(参照:BYD Auto Japan 公式)
これは、全国に数千店舗を展開する国産メーカーと比較すると圧倒的に少なく、お住まいの地域によっては最寄りのディーラーが数十km以上離れているケースも珍しくありません。
定期点検や万が一の故障時に、時間と手間がかかるのではないかという現実的な懸念が、「買うな」という意見の大きな要因です。
3. 未知数なリセールバリュー
アフターサービス網の整備状況とも密接に関わるのが、リセールバリュー(再販価値)の不透明さです。
日本市場での歴史が浅く、中古車市場での流通台数もまだ少ないため、「3年後、5年後にいくらで売れるのか」という予測が非常に立てにくい状況です。
中古車価格は、ブランドの信頼性、耐久性、そして中古車市場での需要によって決まります。
これらの要素がまだ定まっていないBYD車は、将来的に手放す際の資産価値に不安が残るため、購入をためらう一因となっています。
具体的にどんな悪評があるのか

「買うな」という漠然とした意見の裏には、より具体的な性能や機能に対する不満、いわゆる「悪評」が存在します。
ユーザーレビューや専門家の試乗レポートを分析すると、特にハードウェアの完成度に比べて、ソフトウェアの最適化が追いついていないという点に不満が集中しているようです。
ソフトウェア関連の不満点
多くのユーザーが指摘するのが、カーナビやインフォテインメントシステムの使い勝手です。
BYDの象徴とも言える回転式の大型ディスプレイは魅力的ですが、その中身の機能については改善を望む声が多く挙がっています。
- ナビゲーション機能:標準搭載のナビのルート案内が最適でない場合がある、音声案内の音量調整が大雑把すぎる、といった基本的な操作性への不満。
- オーディオ機能:音楽の再生機能がシンプルで、詳細なプレイリスト管理やイコライザー設定ができない。
- 音声認識の精度:「ハイ、BYD」で起動する音声アシスタントの認識精度が完璧ではなく、運転中の操作でストレスを感じることがある。
- 外部連携の制限:Android AutoやApple CarPlayとの連携時に、一部機能が制限されたり、表示が最適化されていなかったりする場合がある。
特定の条件下での性能に関する指摘
もう一つの悪評の柱が、特定の条件下で発生する性能の問題です。特に寒冷地での運用を考えているユーザーからは、冬場の急速充電性能の低下が深刻な問題として報告されています。
これは、EVのバッテリーが低温下では性能を発揮しにくいという一般的特性に加え、BYDの一部の初期モデルでは、充電前にバッテリーを最適な温度に温める「プレコンディショニング機能」が非搭載、あるいは作動条件が限定的だったことが原因と考えられます。
公称の充電速度が出ず、冬の長距離移動に不安を感じるという声は、無視できない悪評と言えるでしょう。
これらの悪評は、車としての基本性能(走る・曲がる・止まる)よりも、日常の使い勝手や快適性に関わる部分に多いのが特徴です。
幸い、ソフトウェアに関する問題は、OTA(Over-the-Air)によるアップデートで改善される可能性が高いため、今後のメーカーの対応に期待が集まります。
日本で売れないという噂は本当か
「鳴り物入りで参入したものの、日本ではさっぱり売れていない」という噂は、果たして事実なのでしょうか。
結論から言えば、販売台数の絶対数ではまだ国産EVに及ばないものの、前年比では大きく成長しており、「売れていない」と切り捨てるのは早計です。
日本の自動車輸入組合(JAIA)のデータを見ると、BYDの2024年通年の乗用車販売台数は2,223台でした。これは、前年である2023年の1,446台から見ると、約54%増という高い成長率を示しています。
もちろん、国内で最も売れている軽EVである日産「サクラ」が年間3万台以上を販売していることを考えれば、その規模はまだ小さいと言わざるを得ません。
しかし、ブランド認知度がほぼゼロの状態からスタートし、限られたディーラー網でこの数字を達成したことは、むしろ「健闘している」と評価する専門家もいます。
専門家からの高評価が後押し
販売台数以上に注目すべきなのが、専門家からの評価の高さです。BYDの車は、日本国内の権威ある自動車賞を相次いで受賞しています。
- Japan EV of the year 2023:コンパクトEVの「DOLPHIN」が、専門家と一般投票によって選ばれる最高賞のグランプリを受賞。
- 2024-2025 日本カー・オブ・ザ・イヤー:スポーティセダンの「SEAL」が、その年を代表する10台の優秀な車に贈られる「10ベストカー」の一台に選出。これは中国メーカーとして初の快挙です。
これらの受賞は、デザイン、走行性能、安全性、そして何よりもコストパフォーマンスが日本の専門家にも高く評価されていることの証左です。
したがって、「売れない」という噂は現状の一断面を切り取ったものであり、今後のポテンシャルを考慮すると、その評価は変わってくる可能性が高いでしょう。
日本市場から撤退する可能性は?
販売台数が伸び悩んでいる、中国メーカーだから長続きしない、といった理由から囁かれる「日本市場からの撤退説」。
しかし、BYDの現在の日本に対する投資規模や事業戦略を見る限り、撤退の可能性は極めて低いと考えられます。
その根拠は、一過性の販売イベントではなく、長期的な視点での事業基盤構築を着実に進めている点にあります。
1. ディーラー網とサービス体制への積極投資
最も分かりやすい例が、全国でのディーラー網展開です。前述の通り、2025年末までに100店舗以上の正規販売網を構築するという目標は、多額の初期投資と継続的な運営コストを必要とします。
これは、短期的な利益が見込めなくても、日本市場に根を下ろすという強いコミットメントの表れです。
2. 日本のニーズに合わせた車種展開
投入する車種を見ても、日本市場を強く意識していることがわかります。主力である「ATTO 3」や「DOLPHIN」に加え、高級セダン「SEAL」を投入することでブランドイメージの向上を図っています。
さらに、将来的には日本の道路事情や税制に完全に適合させた軽自動車規格のEV開発も公言しており、単に本国で売れている車をそのまま持ち込むのではなく、日本市場に最適化した製品開発を進めています。
3. 研究開発拠点の設置
さらに特筆すべきは、日本国内に研究開発拠点を設けている点です。これは、日本の優れた自動車技術や部品メーカーとの連携を深め、より質の高い車づくりを目指す姿勢を示しています。
単なる販売拠点としてだけでなく、開発のパートナーとして日本を重要視していることが伺えます。
過去に日本市場から撤退していった海外メーカーの多くは、販売不振に加えて、日本市場向けの投資を怠ったことが大きな原因でした。
しかし、BYDの現在の動きはそれらとは全く逆です。撤退を心配するよりも、むしろこれから日本の自動車市場にどのような影響を与えていくのかを注視すべき段階にあると言えるでしょう。
BYD車の評判から見る性能と安全性の実態

- 実際の故障に関するユーザーの声
- 故障率が高いという評判の真偽
- 購入時の問題点は何があるのか
- 炎上事故など危険性の噂を検証
- メーカーが謳う安全性の評価は
- 何年乗れる?耐久性の評判
実際の故障に関するユーザーの声
車の信頼性を判断する上で、実際に所有しているオーナーの声は最も参考になる情報の一つです。
各種レビューサイトやSNSを調査すると、BYD車に関する様々な故障や不具合の報告が挙がっています。
それらを分類すると、大きく分けて「初期不良・軽微な不具合」と「走行に関わる懸念」に分けられます。
初期不良・軽微な不具合の報告例
納車後、比較的早い段階で発生するトラブルの報告が中心です。
- 電子系統の不具合:「外気温センサーが機能せず、表示が出なくなった」「アンビエントライトが一部点灯しなくなった」など。
- 部品の建て付け不良:「試乗車でハンドル周りからガタガタと異音がした」「ドアの内張りの仕上げが甘い」など。
- 装備品の品質:「標準装備のワイパーの拭き取り性能が低い」「エアコンの効きが悪い、フロントガラスが結露しやすい」など。
これらの多くは、ディーラーでの部品交換や調整によって解決しており、オーナーからは「ディーラーの対応は迅速だった」という声も同時に聞かれます。
走行に関わる懸念点
より深刻に受け止められるのが、走行の安全性や快適性に関わる報告です。
一部のユーザーからは、高速道路などで意図しない場面で自動ブレーキが作動する「ゴーストブレーキ」を経験したという怖い報告も挙がっています。
これは先進運転支援システム(ADAS)の制御プログラムの問題と考えられ、早急な改善が求められる点です。
総じて言えること
現状では、走行不能に陥るような致命的な機関系の故障報告は非常に少ない一方で、快適性や品質感を損なう細かな不具合や、ソフトウェアの熟成不足に起因するトラブルが散見される、という状況です。
特に初期ロットの車両には、こうした「詰めの甘さ」が見られる傾向があるようです。
故障率が高いという評判の真偽
個別の故障報告を受けて、「やはりBYDは故障率が高いのでは?」と不安に思うかもしれません。
しかし、その評判の真偽を客観的なデータで判断することは、現時点では極めて困難です。
その最大の理由は、日本国内には、メーカーや車種ごとの「故障率」を公平に比較できる公的な統計データが存在しないためです。
米国の「コンシューマー・レポート」誌のように、大規模な読者アンケートに基づいた信頼性ランキングがあれば判断材料になりますが、日本ではそうした調査は一般的ではありません。
また、BYDは日本での販売台数がまだ少なく、長期的な運用データが不足しているため、統計的に有意な故障率を算出すること自体が不可能です。
構造的な観点からの考察
一方で、EVの構造的な特徴から故障率を考察することは可能です。EVは、数百から数千の部品で構成されるエンジンや複雑な変速機(トランスミッション)を搭載していません。
そのため、原理的にはガソリン車よりも可動部品が少なく、故障のリスクを抱える箇所が少ないというメリットがあります。
エンジンオイルやプラグ、各種ベルトといった定期的な交換が必要な消耗部品もほとんどなく、メンテナンスの手間とコストを削減できる可能性があります。
BYDの基幹部品であるバッテリーやモーターは、比較的シンプルな構造で、メーカーも長期保証を付けていることから、その部分の信頼性は高いと考えられます。
結論として、現時点では「故障率が高い」という評判を裏付ける客観的根拠はありません。むしろ懸念すべきは、数多くのセンサーや制御コンピュータといった「電子部品」の長期的な信頼性であり、これはBYDに限らず現代のすべての自動車が抱える課題と言えるでしょう。
購入時の問題点は何があるのか

BYD車の購入を現実的に考えた場合、その魅力的な価格や性能の裏で、乗り越えなければならないいくつかの現実的な「問題点」や「課題」が存在します。
これらを事前に理解し、自身のカーライフに適合するかを冷静に判断することが後悔しないための鍵となります。
1.充電環境の確保
EVの運用における最大の課題であり、購入の絶対条件とも言えるのが自宅での充電環境です。
戸建てで駐車場に200Vコンセントを設置できる場合は問題ありませんが、マンションなどの集合住宅では、管理組合の規約や他の居住者の合意形成など、ハードルが高くなるケースが多々あります。
公共の充電スポットに頼る運用も不可能ではありませんが、「充電待ちの時間」「充電料金の割高さ」「充電器の故障やメンテナンス」といったストレスに常に晒される可能性があり、日常的な利用にはあまりお勧めできません。
2. アフターサービス網と地方の格差
都市部を中心にディーラー網は拡大していますが、地方ではまだ店舗が空白のエリアも少なくありません。
購入前に、自宅から最寄りの正規ディーラーまでの距離と所要時間を必ず確認しましょう。万が一のトラブルやリコールの際に、気軽に持ち込める距離にあるかどうかは、安心感に直結します。
また、購入を検討する際は、実際に店舗を訪れ、試乗車の有無や担当者の知識レベル、お店の雰囲気などを自分の目で確かめることも重要です。
3. 長期的な資産価値(リセールバリュー)
「買うなと言われる理由」でも触れましたが、リセールバリューの不透明さは購入時の大きな懸念点です。
数年後の乗り換えを前提とする場合、下取り価格が想定より低くなるリスクは考慮に入れておくべきです。
リスクヘッジとしての購入方法
このリセールリスクを回避する方法として、残価設定ローンやカーリースの利用が有効な選択肢となります。
これらのプランは、数年後の残価(買取保証額)をあらかじめ設定するため、月々の支払いを抑えつつ、将来の市場価格の変動リスクをメーカーやリース会社に委ねることができます。
4. オプション選択の自由度と追加費用
BYDは装備が充実したワングレード展開が基本のため、オプション選択で悩む必要がない反面、「この装備はいらないから安くしてほしい」という要望には応えられません。
また、冬タイヤとホイールのセットが、空気圧センサー(TPMS)が必須のため国産車より割高になる傾向があるなど、購入後の追加費用についても把握しておく必要があります。
炎上事故など危険性の噂を検証
EVに関する話題で、人々の不安を最も煽るのが「バッテリーの炎上事故」に関するニュースです。
BYDに関しても、過去に海外で電気バスが炎上したといった報道があり、その危険性を心配する声があります。
まず事実として、過去に海外でBYD製の電池を搭載した車両の火災事故が報告されたことはあります。しかし、これらのニュースに接する際は、いくつかの点を冷静に考慮する必要があります。
1. 火災発生率の客観的比較
EVの火災はニュースになりやすいですが、実は統計データを見ると、車両10万台あたりの火災発生率は、ガソリン車やハイブリッド車よりもEVの方が圧倒的に低いという調査結果があります。
例えば、米国の国家運輸安全委員会(NTSB)などのデータに基づいた調査では、10万台あたりの火災件数はハイブリッド車が約3,475件、ガソリン車が約1,530件であるのに対し、EVはわずか約25件だったと報告されています。(参照:AutoWeek)
これは、ガソリンという可燃性の液体を常に搭載している内燃機関車の構造的なリスクを示唆しています。
2. バッテリー技術の進化
BYDが現在の主力車種に搭載している「ブレードバッテリー」は、安全性を最重要課題として開発された新世代のバッテリーで、リン酸鉄リチウム(LFP)という熱安定性の高い材料を使用し、内部短絡が起きにくい独自のセル構造を持っています。
メーカーが行ったデモンストレーションでは、バッテリーパックに釘を貫通させるという極めて過酷なテストでも、発煙や発火に至らないという結果が示されており、従来の三元系リチウムイオンバッテリーに比べて格段に安全性が向上しているとされています。
もちろん、どんな製品であってもリスクがゼロになることはありません。重要なのは、報道の印象だけで判断するのではなく、客観的なデータや採用されている技術の特性を理解することです。
現行のBYD乗用車が、ことさらに危険性が高いと判断するべき根拠は見当たりません。
メーカーが謳う安全性の評価は
メーカー自身が安全性をアピールするのは当然ですが、その主張が客観的に見て信頼できるものなのかを判断するには、第三者機関による評価が最も重要な指標となります。
この点において、BYDの各車種は、世界で最も厳格かつ権威ある安全評価機関の一つである「ユーロNCAP(Euro NCAP)」において、軒並み最高評価の五つ星を獲得しており、その安全性は国際的に証明されていると言えます。
ユーロNCAPでの詳細な評価
ユーロNCAPは「成人乗員保護」「子供乗員保護」「交通弱者(歩行者・自転車)保護」「安全支援(ADAS)」の4つのカテゴリーで評価されます。BYDの主力車種のスコアは以下の通りです。
車種 (評価年) | 総合評価 | 成人乗員保護 | 子供乗員保護 | 交通弱者保護 | 安全支援 |
---|---|---|---|---|---|
ATTO 3 (2022) | ★★★★★ | 91% | 89% | 69% | 74% |
DOLPHIN (2023) | ★★★★★ | 89% | 87% | 85% | 79% |
SEAL (2023) | ★★★★★ | 89% | 87% | 82% | 76% |
(参照:Euro NCAP公式サイト)
特に、衝突時の大人や子供の保護性能で軒並み90%近い非常に高いスコアを記録している点は注目に値します。
これは、ボディ剛性の高さやエアバッグシステムの有効性など、基本的な衝突安全性能が優れていることを示しています。
また、DOLPHINやSEALでは、歩行者や自転車を検知する自動ブレーキの性能も高く評価されており、予防安全の観点でも高いレベルにあることがわかります。
残念ながら、2025年7月時点で日本のJNCAPによる評価はまだ行われていませんが、世界で最も厳しい基準の一つであるユーロNCAPでこれだけの高評価を得ていることは、BYDの安全性能に対する信頼性を大きく高めるものです。
何年乗れる?耐久性の評判
「この車は、いったい何年安心して乗れるのか?」これは、高価な買い物である自動車の価値を測る上で、燃費や価格と同じくらい重要な問いです。
日本市場に登場してまだ日が浅いBYDの車について、その長期的な耐久性を正確に予測することは困難ですが、メーカーの保証制度やEVの構造的特性から、ある程度の見通しを立てることができます。
メーカー保証にみる耐久性への自信
BYDが設定している新車保証は、その耐久性に対する自信の表れと見ることができます。特に重要なのは、EVの心臓部である駆動用バッテリーに対する保証です。
BYDの主な新車保証(2025年時点)
- 一般保証:新車登録から4年間または走行距離10万kmまで。
- 高電圧部品保証:新車登録から8年間または走行距離15万kmまで。(モーターや制御ユニットなど)
- 駆動用バッテリー容量保証:新車登録から8年間または走行距離15万kmまで、バッテリー容量70%以上を保証。
さらに、有償の延長保証プログラムに加入すれば、バッテリー容量保証を最長10年30万kmまで延長することも可能です。(参照:BYD Auto Japan公式サイト)
これは国内の自動車メーカーの中でも最長クラスの保証であり、バッテリーの寿命に対する不安を大きく和らげてくれます。
構造的な利点と潜在的な懸念点
前述の通り、EVはエンジンや複雑なトランスミッションを持たないため、可動部品が少なく、構造的に故障しにくいという利点があります。
エンジンオイル交換のような定期的なメンテナンスも不要で、長期的に見て機械的なトラブルのリスクはガソリン車より低いと考えられます。
しかし、一方で懸念点もあります。それは、数多くの電子制御ユニットや大型タッチスクリーンといった、高度な電子部品の長期信頼性です。
これらの部品は、日本の高温多湿な環境や経年劣化によって、予期せぬ不具合を起こす可能性がゼロではありません。
また、内外装に使われている樹脂パーツの色褪せや劣化が、国産車と同等レベルで抑えられるかどうかも、長期的な満足度を左右するポイントになります。
結論としては、心臓部であるバッテリーやモーターの耐久性は、手厚いメーカー保証によって担保されています。
しかし、内外装や電子部品の「ヤレ」がどの程度出てくるかについては、まだ未知数で、数年が経過した車両のユーザーレポートが、今後の重要な判断材料となるでしょう。
BYD車の評判の総まとめ

最後に、この記事で解説してきたBYD車の評判に関する要点を、まとめます。
- BYDは中国・深圳に本社を置く世界有数のバッテリー・自動車メーカー
- 「買うな」という評判は主に品質への先入観やアフターサービス網への不安から生じている
- 内装の細部の仕上げやソフトウェアの使い勝手に関する悪評が一部で見られる
- 「売れない」は誇張で販売台数は前年比で大きく増加しており成長段階にある
- 全国ディーラー網の拡充や日本向け車種開発など積極投資から撤退の可能性は低い
- 電子系統の初期不良など軽微な故障報告はあるがディーラーの対応は概ね迅速
- 「故障率が高い」と断定できる客観的・統計的なデータは現時点では存在しない
- 購入時の問題点として最も大きいのは自宅充電環境の確保である
- 地方におけるディーラー網の不足やリセールバリューの不透明さも課題
- 海外の事故報道はあるがEVの火災発生率はガソリン車より統計的に低い
- 安全性の核となる「ブレードバッテリー」は熱暴走しにくい構造で高い安全性を誇る
- 欧州の安全評価「ユーロNCAP」では主力3車種すべてが最高評価の五つ星を獲得
- 耐久性についてはバッテリーに最長10年30万kmの延長保証があり安心感は高い
- 内外装や電子部品の長期的な耐久性についてはまだ未知数な部分が残る
- ハードウェアの基本性能やコストパフォーマンスは専門家からも高く評価されている
- 購入を成功させるにはネガティブな評判の背景を理解し総合的に判断することが不可欠